協働ロボットと外部軸の同期制御
はじめに
近年、製造業では自動化の進展により、協働ロボット(コボット)の導入が加速しています。協働ロボットは、人と安全に共存しながら作業を行うことが可能であり、省スペースでの運用や簡単なプログラミングが魅力です。しかし、より高度な生産プロセスを実現するためには、ロボット単体の動作だけでなく、外部軸(ターンテーブル、リニアガイド、コンベヤなど)と連携させた同期制御が求められます。
本記事では、協働ロボットと外部軸の同期制御の概要、メリット、技術的なポイント、活用事例について詳しく解説します。
協働ロボットと外部軸の同期制御とは?
協働ロボット単体では6軸程度の自由度を持ちますが、外部軸を追加することで、動作範囲の拡大やより複雑な作業が可能になります。同期制御とは、ロボットの動作と外部軸の動きをリアルタイムで調整し、一体的に制御する技術のことを指します。
外部軸には以下のような種類があります。
- リニアスライダー:ロボットの作業範囲を拡張。
- 回転テーブル:ワークの回転を同期させ、最適な角度で作業を実行。
- コンベヤトラッキング:流れるワークに対してロボットが正確に追従。
協働ロボットと外部軸の同期制御のメリット
1. 作業範囲の拡張
協働ロボットの可動範囲は限られていますが、リニアスライダーなどの外部軸を追加することで、より広い範囲で作業を行うことが可能になります。
2. 生産性の向上
ターンテーブルやコンベヤを利用し、複数のワークを連続して処理することで、サイクルタイムを短縮し、生産性を向上させることができます。
3. 精度の向上
ワークを適切な位置や角度に調整することで、精密な加工や溶接などの工程で品質を向上させることができます。
4. 多様な作業への対応
組立、溶接、塗装、ピッキングなど、様々な工程での活用が可能になり、柔軟な生産ラインの構築ができます。
協働ロボットと外部軸の同期制御の技術的なポイント
1. リアルタイム通信
協働ロボットと外部軸の同期制御には、高速かつ正確な通信が不可欠です。一般的に、以下のような通信プロトコルが用いられます。
- EtherCAT(高精度な制御向け)
- Modbus TCP(簡易な制御向け)
- Profinet(工場自動化システム向け)
2. モーションコントローラの活用
外部軸とロボットを正確に同期させるためには、専用のモーションコントローラが必要です。これにより、ロボットと外部軸の動作を1つのシステムとして統合し、リアルタイムで制御できます。
3. エンコーダによるフィードバック制御
外部軸の位置や速度を正確に測定し、ロボットと同期させるために、エンコーダを用いたフィードバック制御が行われます。これにより、高精度な動作を実現します。
4. 動作プログラムの統合
協働ロボットと外部軸を連携させるためには、統合されたプログラムの作成が求められます。最近では、ユーザーフレンドリーなGUIを備えたプログラミング環境が提供されており、専門的な知識がなくても簡単に設定が可能です。
協働ロボットと外部軸の同期制御の活用事例
1. 溶接作業の自動化
回転テーブルと協働ロボットを連携させ、ワークを回転させながら精密な溶接を行う事例があります。これにより、従来手作業では難しかった均一な溶接が可能になります。
2. 食品業界での活用
コンベヤトラッキング技術を活用し、流れてくる食品を正確にピッキングしてパッキングするシステムが導入されています。これにより、高速で正確な搬送作業が可能になっています。
3. 精密組立ライン
電子機器の組立工程では、ロボットとリニアスライダーを組み合わせることで、高精度な部品の取り付けを自動化し、生産の均一化を図っています。
4. 自動車部品の加工
大型の自動車部品に対して、リニアスライダーを使用してロボットの作業範囲を広げ、効率的な加工を実現する事例もあります。
まとめ
協働ロボットと外部軸の同期制御を活用することで、作業範囲の拡張、生産性の向上、精度の向上、多様な作業への対応が可能になります。特に、リアルタイム通信、モーションコントローラの活用、エンコーダによるフィードバック制御、統合プログラムの開発などの技術が、同期制御の成功に不可欠です。
今後、協働ロボットの技術がさらに進化することで、より高度な同期制御が可能となり、さまざまな業界での自動化が加速することが期待されます。
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