こんにちは
FAロボットマネジメントの三輪です。
今回は産業用ロボットを用いて、様々な製品や業界の加工に必要な研磨加工の自動化について紹介していきます。
研磨加工といえど平面研削盤の様な超精密加工はロボットで再現する事は現時点では不可能な為、金属表面の光沢を出すバフ掛け程度までの研磨が対象となります。
■研磨作業を自動化するメリット
製造現場ではハンドツールと砥石を使って様々な場所で大なり小なり研磨が行われている事と思いますが、ハンドツールでの研磨作業は重たいツールで高速回転する砥石を均一にワークに当てて研磨する非常に難易度の高い作業です。製造業の加工の中でもトップクラスの3K作業と言っても過言ではありません。
そして、加工の出来栄えに個人差が生まれやすい作業であり、騒音や振動と粉塵による人体への過度なストレスや健康被害を与える加工です。
■研磨作業を自動化するポイント
まず研磨作業を自動化する為に抑えておかないといけないポイントが下記です。
これが研磨作業を自動化する為に絶対に必要なポイントですがこれがなかなか難しい要件でもあります。
■何故均一に砥石を当てるのが難しいか
砥石を押し付ける力の加減は非常に繊細な力のコントロールが必要であり大きな力を発生するロボットでは制御出来ない領域のコントロールとなる為です。
次に砥石は使用すると減っていきます。
薄くなると同時に外周は短くなっていきますし砥石表面には削れたスラッジが付着していきます。
つまりいつも同じ状態にいない砥石をいつも同じ力でワークに接触する様に制御が必要ということです。
そしてワークの形状や変形やたわみです。
加工するワークの中でもコーナー部分等の応力が集中するポイントもあれば広い面を研ぐ場合もありますし、薄板の製缶品であればワークに砥石を押し付けるとたわみが発生して加工したい面が逃げていく事もあります。
ロボットは基本的に同じ軌跡を繰り返すのでワークの変形があっても追従出来ないとまともに研磨が出来ません。
■対策のポイント
これまでに述べてきた砥石を均一な力でワークに当てる事を可能にする為には下記の様な機構や制御が必要となります。
■ツールに掛かる負荷を検知してロボットの軌道を制御する。
■物理的に押し付ける力が均一になるようにする。
つまり倣い機能です。
最近では、砥石の大きさやワークの変形等に追従する事且つその制御が繊細なコントロールが出来る事を目的としたロボット用の研磨ツールが販売されています。
ロボットで研磨作業を行う事を前提として開発された研磨ツールを下記に紹介します。
■AKグラインダ(愛知産業株式会社)
『AKグラインダ』は、グラインダの押し付け圧力を常に一定にコントロールしながら自動で研削する自動倣い機能付研削装置です。
押し付け圧力は任意に設定が可能で、重切削から塗膜剥がしなどの軽切削まで、幅広い作業に適用できます。
また、溶接変形などがあっても自動的に研削部に倣い追従しますので均一な仕上げ面が得られます。開発以来30年、多くの台数の納入実績があり、高い評価を頂いております。【特長】
■簡単な操作で自動運転が可能
■凹凸変形などがあっても自動で正確に追従
■負荷が増大すると自動停止し砥石の破損やグラインダ焼損を防止
■高周波制御方式でφ180ミリ、φ100ミリの砥石が使用可能
■鉄鋼やステンレス鋼の溶接ビードの研削でも毎分45~60グラムの
高速で研削が可能
■プッシュコープ(アメリカ製・愛知産業株式会社)
プッシュコープ社の次世代倣い制御装置(アクティブ・コンプライアンス制御技術)は、6軸力覚、加速度、位置センサーの組合せと、プッシュコープ社独自のコンプライアンス制御技術により、人間が行う繊細な作業工程を産業ロボットに置き換えることを可能にしました。
● アクティブ・コンプライアンス(高精細圧力制御)
アクティブ・コンプライアンス装置はクローズドループ制御からなり、力覚、加速度、位置センサーを使用してコントロールし、設定の力を正確にワークに伝えます。 ツール全姿勢において、ワーク輪郭全体にわたり正確な押付力が保持されます。コントローラーに必要な押付力を設定するだけで、アクティブツールが上下左右、任意の方向にツールをコントロールします。パッシブ・コンプライアンス(一定圧力制御)と比べ、高い柔軟性を持ちます。
● パッシブ・コンプライアンス(一定圧力制御)
パッシブ・コンプライアンス装置は、シンプルで安価なオープンループ制御です。 空気圧レギュレーターを返してツール押付力を設定します。平面や角柱部品、または高精度の力制御が不要な溶接ビード除去などのプロセスにおいて活用できます。
特長
● 金属、木工、ガラス、プラスティック、複合材(コンポジット)等あらゆる生産現場に適用できます。
● プッシュコープ社オリジナルのサーボスピンドル(BT シャンク)を使用することにより、先端研磨剤等の自動交換、エンドミル、カッティングディスク、バフなど一台の装置であらゆる作業工程の自動化できます。
● あらゆる工具の取り付けが可能
愛知産業が独自に開発、販売している「AK グラインダー」は、高周波グライダー等のフィードバック信号から自動倣いを可能にした自動倣い機能付き研削装置です。金属荒削りに特化しており、使用できるツールに制限があります。
プッシュコープ社のアクティブ・コンプライアンス制御装置は、スライドユニット単体で高精細な倣い機能を有しており、スライドユニットにあらゆる種類の工具を取り付けることができます。
上記に紹介した製品はごく一部であり、まだまだ沢山の研磨用ツールが存在します。
そして上記は基本的にトルク検知による押し付けの修正がメインのデジタル的な制御機構となりますが、もっとシンプルに高い応答性を確保したい場合には、あえてアナログ式なスプリングやエアシリンダを用いたフローティング機構を研磨ツールの土台に装着する事が有効だと思います。
バネはバネ常数により反発力が決まっていますので、過度な負荷が掛かれば、ツールは逃げると同時に決められた力でワークに砥石を押し付ける事が出来ます。
同様にエアシリンダを用いた場合には、加圧するエアの圧力やエアシリンダのボアで押し付ける力は決まりますので、簡単に均一な押し付けを可能とします。
研磨の自動化の肝である均一な砥石の押し付けを可能にする為に、是非様々な機器の検討をする事をお勧めいたします。
当然加工するものや砥石の種類や要求品質によって必要な機器は異なりますので、自動化を進めていく際には、要件定義と機器のテストを行い品質の評価を行いながら進めていきましょう!!
FAロボットマネジメント株式会社では、自動化を推進していく企業様の支援を行っております。
コラムに対しての疑問点等ございましたら下記問い合わせフォームよりご連絡ください。お待ちしております。
コメント