こんにちは
FAロボットマネジメントの三輪です。
今回は工作機械への協働ロボット活用方法について述べていきたいと思います。
正直工作機械への協働ロボット活用は難易度が高くあまり活用が進んでいません。
それは何故か?
少量多品種生産である事と工作機械とロボットの通信制御に依るものが大きいと思います。
工作機械へ協働ロボットを活用する場合ほとんどがワークのハンドリングでしょう。
ワークのハンドリング(加工物の着脱作業)は、人が作業する事が一般的であり、加工機が動くも止まるも人の操作に頼っている現状が課題としてあるからです。
常に人が監視して、加工が終了次第ワークの着脱を行って工作機械を稼働させる事が稼働率や生産数を大きく左右する割には付加価値を生まない作業である為、人材不足傾向の昨今では大きな課題となっています。
ワーク着脱作業の簡単な流れとしては下記の様なものが一般的でしょう。
加工前のワークを把持してから加工機にセットした後のカバーを閉めて起動させる。加工が終了次第、カバーを開放して加工済みのワークを把持して取り外しして特定の場所に置く。
こんな活用方法がイメージしやすいと思いますが、このような単純作業でも実現する為にはクリアしなければならない課題とポイントが沢山あります。
それらの課題解決の難易度が高い為に導入が進んでいないのです。
ではどういう課題があるのか工程別に考えてみます。
1:ワークを把持する
この工程で検討するべきポイントは下記です。
・ワーク重量
・ワーク把持方法
・把持した時の基準
・ワーク位置検知
・上記を複数品種で検討
ロボットには可搬重量性能が型式によって決められています。把持するワークと把持する為のハンドの重さとモーメント(力×距離)を考えてロボットを選定する必要があります。
そして把持した後に精密に加工機にセットする為には把持した場合の基準がいつも一定でなければいけません。
把持する時にワーク常に同じ場所に有れば良いですが、そうでは無い場合は、ワークが何処に置いてあるかロボット側で判断する必要が出てきます。
この様なポイントに対しての検討を複数品種それぞれに考える必要がありますので非常に複雑且つ難易度が高くなります。
2:加工機へのワーク着脱
この工程で大事なポイントは下記です。
・ロボットとチャック間のワークの受け渡し方法
・位置決め精度
ここは加工の寸法に直結する最も重要なポイントです。
工作機械の種類や加工方法によってチャックの方法は違いますので、それぞれに最適な方法を考えなければいけません。
そして協働ロボットでワークを搬送した場合にはある程度の範囲で位置誤差が発生しますのでチャック部分でセンタリングや位置決め出来る様な機構を設ける必要があります。
更に加工終了後のロボットへのワークの受け渡しについても、チャックがスムーズに開放され大きな力を掛けなくてもワークが脱着且つ製品を落下させたりしない様になっていなければなりません。
3:工作機械を起動させる
この工程でのポイントは下記です。
・カバーの開閉動作
・工作機械の始動方法
・工作機械の加工終了の検知
切削油を多く使う工作機械などはカバーの開閉が必ずありますが、このカバーが電動式なのか手動式なのかは結構重要なポイントです。
手動式の場合には協働ロボットのハンドを使ってカバーの開閉動作をさせる必要がありますので、ロボットのリーチや軌跡を加味して選定が必要ですし、電動式の場合には協働ロボットと工作機械を電気的に通信させて制御するか、ハンドで開閉ボタンを操作するか検討しなければいけません。
これは工作機械の始動や加工終了の検知についても同様の事が言えます。
古い工作機械の場合にはほとんどが手動式且つ電気制御もシンプルなので簡単に実配線で割り込みしたりする事が可能ですが、割と新しい工作機械の場合は、独自PLCを用いた電気制御されていて簡単に協働ロボットと通信する事は出来ないし、工作機械メーカー側も電気回路などの情報を開示してくれない為、実質的には電気的な制御の受け渡しが不可能になっています。
その為協働ロボットにカメラを搭載して起動ボタンやパトランプなどを見てロボット側で判断しなければならないと言う妙にアナログな使い方が求められてしまいます。
上記の様な工程別のポイントをワーク形状や工作機械の特性に合わせてカスタマイズする必要があり、非常に難易度が高いという事が理解いただけたかと思います。
では工作機械へのワーク供給作業に協働ロボットを活用する事を諦めるのか?という事では無く、上記の様なポイントを理解しつつ、どの様な活用をしていく事を考える事が重要です。
つまり上記の様な課題が発生しにくい製品や工程を選んで検討していけば良いという事です。
対象品種は生産量に応じて優先順位を決めてやり加工方法・形状・重量の類似性を探します。
そしてロボット側でがある程度ラフな位置決めでも加工品質が担保される様な加工機側のチャック機構や加工方法を考えて後は工作機械とロボットの連携方法を考える事でよりカスタマイズするべきポイントが明確になっていきます。
後は最適な機器を選定してインテグレーションしていけば良いです。
用途がある程度特定されている工作機械の場合にはメーカー側がワーク着脱用ロボットを組み込んで販売している場合もありますが、汎用型の工作機械はどの様な用途で使用されるか分からないのでロボットを組み込んで販売する事は当面はあまり考えられません。
工作機械へのワーク着脱作業は付加価値を生まないけれど必ず人員が必要という本質的な課題に対してはやはり自社でしっかりと自動化を検討していくしか無いでしょう。
そこが出来てるか出来ていないかは、工作機械を使う機械加工業の競争力として大きな差を生む事は間違いないので、是非諦めずに挑戦していただきたいと思います。
FAロボットマネジメントでは、正にこの様な自動化検討のご支援をさせていただいております。
自動化にお悩みがある方は是非お問合せいただければと思います。
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