こんにちは
FAロボットマネジメントの三輪です。
今回は加工物の材質に関わらず、幅広い業界で行われる塗装工程へのロボット活用と自動化について、導入のポイントを解説していきます。
■産業用ロボット
まず塗装工程に用いるロボットは普通の産業用ロボットではありません。
可燃性で揮発する溶剤を扱う為、防爆仕様のロボットを使用する必要があります。
ロボットはサーボモーターの集合体であり、動作する所全てに電気配線や端子が存在しており、万が一接点不良や断線等により短絡して火花が起きる様な事があった際の安全性について対策を講じているロボットになりますので、防爆ロボットは通常の産業用ロボットに比べて価格は高くなります。
■塗装機
スプレーガンは塗装ロボットシステムの性能を決めてしまう重要な機器なのは言うまでも無いですが、多種多様なスプレーガンが存在する中で、ロボットとの相性が良いものや、悪いものがあります。
要求される塗装品質は企業様や製品毎に変わりますので、どうような性能を持ったスプレーガンを選択するかは、非常に大事な検討項目でしょう。
通常手吹き塗装を行う際はガンを大きく振りながらオーバースプレーさせていきます。
もちろんスプレーガンの種類や塗る場所によって塗装職人が加減しながら塗装していますが、この様なオーバースプレーをロボットで再現しようとするとロボットの教示が大変かつ塗着効率が悪くなる為、塗装ロボットを導入するメリットが大きく限定されかねません。
ロボット塗装と相性の良いスプレーガンについては今後コラムで紹介していきたいと思いますが、導入検討の際は、人の作業をロボットに真似させるのでは無く、ロボットだから出来る技術を活かす方向でスプレーガンを選定していく事が重要です。
■ワーク固定方法検討
次に製品の固定や吊り方の検討が重要です。
立方体の6面全体から塗る必要があるのであれば、吊るか、治具で空中に浮かせるかなど考えなければいけません。
1面塗らなくて良いならば台に置いて塗る事もあるでしょう。
ただし、ロボット塗装の場合は、製品の固定位置がある程度の範囲でいつも決められた位置に来る様な機構にしておかなければいけません。
ロボット塗装する際にはロボットの動作を教示します。塗装する品種に合わせて専用のロボットPRGを作成し、形状に合わせたスプレーガンの動作を作りこむ事で、自動化を実現しますが、大前提として塗装するワークがロボットを教示した時と同じ位置に同じ姿勢で置いてある必要があります。
同じ位置・姿勢といっても、溶接や研磨・ハンドリングなどのロボット加工に比べると、ラフな位置決めでも大丈夫な事が多いですが、長期的にロボット塗装を運用していく為には、ワーク固定方法の再現性が非常に重要です。
如何に再現性高く多品種を固定出来る様な機構・治具にするかが、塗装ロボット導入後の品質や生産性を大きく左右しますので慎重に検討しましょう。
■ロボット教示方法
ロボットへの教示作業は、操作用のペンダントを用いたオンラインティーチングが一般的です。
機械的な加工の場合は、狙い位置が明確にありますが、塗装の場合は塗り方や塗る場所によって、アプローチ方法を変える事が多く、ペンダントでティーチングをした場合、非常に作業時間が長く掛かる傾向にあります。
教示をして塗装した後、乾燥させてその後膜厚や肌の状態を確認する必要があり、教示全体の時間がとても掛かりやすいのです。
そしてペンダントを用いたオンラインティーチングを実施している途中はロボットで生産する事が出来ない為、土日など生産計画の無い日に実施するなどの対応を取らざるを得ない事になります。
このような教示に掛かる工数を低減させる為に、PCの仮想空間上でロボット教示を行うオフラインティーチングや、塗装職人のスプレーガンの動きをスキャンしてロボットPRGを生成してひとの動きを再現するようなソフトウェアが存在します。
多品種少量生産をしている企業の場合、ロボットシステムのPRGの修正や品種追加をどれだけ高頻度に実施していけるかは、ロボットシステムの生産性に大きな影響を及ぼしますので、導入後の運用を見据えて教示方法を検討しておく必要があります。
■ワーク送給方法
ワークの固定方法の話と一部繋がる部分もありますが、ワークの供給方法についても塗装ロボットシステムを検討する上で重要な項目です。
塗装をする為には、ロボット教示をした時と同じ方法・位置でワークを治具や台の上に固定する必要がありますが、その作業を誰がどこでやるか?によって塗装ロボットシステムの生産性に大きな影響を与えます。
塗装ロボット1台に対して、ワークセット部が1台しかない場合、ロボットが塗装している間は次のワークを供給する事ができません。
言い換えるとワークの供給している間はロボットを動かす事が出来ませんので、一日のうちロボットが動く事が可能な時間、稼働可能時間が短くなってしまいます。
ロボットの稼働可能時間を最大化したい場合、ロボットが塗装している間に次に塗装するワークセットを完了させておき、塗装が終わり次第直ぐにロボットが動けるようにしておく必要があります。
塗装に掛かる時間とワーク送給に掛かる時間のバランスを考えて、以下にロボットシステムが連続稼働出来るようなシステム構想にするかの検討をおすすめします。
■工程間搬送
塗装工程全体の作業の流れの中で、工程間物流というのは、非常に多くの工数や無駄が発生している事があります。
開梱・清掃(脱脂)・検査・除電・塗装・乾燥・検査・梱包などの一連の工程の場合、それぞれの作業場所が集約されていない時にはワークの運搬が必要になりますので、一日何往復も同じ道を行ったり来たりするような運搬時間が発生します。
ワークの運搬がある以上、置き場や仕掛品が存在する為、管理が複雑になっていきます。
この運搬の無駄を塗装ロボット導入のタイミングで同時に自動化してしまう事で、工程全体の合理化が図れます。
例えば、
開梱作業スペースから塗装部、乾燥炉、ワーク送給部を自動搬送コンベアなどでつなげてしまう方法です。
自動搬送のシステムを作ってしまえば、工程間の搬送で人が移動する必要が無くなり、人材と作業を集約する事が可能になる為、投資額は大きくなりますが、大きな効果が得られます。
塗装ロボット導入で塗装を自動化するならば、是非一緒に検討したいですね。
今回は塗装ロボットを導入してよりよく運用していく為に必要なポイントを解説してきましたが、いかがでしょうか。
塗装工程は非常に属人化していると同時に人材採用の厳しい作業となってきております。
労働人口減少傾向にある中で、早めの自動化検討を行っていくことは、塗装を行う企業様にとって、大きなミッションであると思いますので、このコラムが少しでも参考になれば幸いです。
FAロボットマネジメントは自動化に挑戦する企業様を全力で応援します。
無料現場診断等もご対応させていただきますので、何かご質問等ございましたら問い合わせフォームよりご連絡ください。
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