皆さんこんにちは
FAロボットマネジメントの三輪です。
今回は、溶接ロボットを導入して溶接工程を自動化をした際に発生する課題と現代の技術、今後急速に開発が進むであろう技術について考えを述べていきたいと思います。
板金加工業などを中心にロボット化が進みつつ有る溶接ロボットの導入ですが、今も昔も課題は多くあります。
代表的な課題の一つとしては、溶接の狙い精度です。
精度と言ってもロボットの精度の問題ではなく、トーチ狙い位置の精度です。
ロボットは繰り返し動作が得意なのは周知の事実ですが、それはあくまでロボットコントローラー内部の座標軸に対しての話であり、現実空間の座標とは若干の乖離が生まれます。
ロボットはサーボモーターの集合体でありモーター内部のエンコーダから現在値を取得しています。
逆にいうとそれだけしか見ていない為、ロボットの各軸間を連結するフレームのたわみや歪みなどは把握する事は出来ません。
同様にハンドエフェクターが何処を狙っているのかもロボットコントローラー側は知るよしも無いのです。
ロボットコントローラーは指令された通りに各軸モーターが回転角度に到達する様に動きますが、現実の空間内で溶接トーチの先端が何処を狙っているのか?制御していないので些細な事でも溶接の狙い位置はズレてしまいます。
当然、前工程での加工精度などにより製品形状が変化する事も多いですし、2軸ポジショナーなどを用いて傾倒姿勢を作っている場合には、ロボットとポジショナー間のレベリング(ロボット座標上の水平とポジショナー上面部のリアルな水平合わせ)を完璧に合わせる事は非常に難しい為、そこでも誤差が生まれてきます。
回転テーブルやロボットスライダを用いても同様ですね。
一つ一つの誤差やズレ量は小さくても、それが積み上げ誤差となってどんどんズレ量が大きくなっていきます。
ロボット、ハンドエフェクター(トーチなど)、ワーク、ワーク固定治具、ポジショナーなどシステム構成する全ての部品が溶接の狙い位置を左右してしまうのです。
ロボット座標と現物のずれを解消する方法に3点教示などの簡易キャリブレーションを行う手法がありますが、基本的にはマスタプログラムに対してのオフセット量を人間が目で見ながらずれ量を入力しなくてはいけません。
上記したように、ロボット座標と現物の誤差は加工の度にずれる可能性がある為、基本的には、1サイクル動作毎に実施するのが理想ですが、実際にはそんな事非効率過ぎて出来ません。
この課題に対しての溶接用のセンシング機器としてタッチセンサー、アークセンサー、レーザーセンサーなどを用いた現物確認とロボットPRGの自動補正の技術があります。
加工現物をセンシングする事でシステムの積み上げ誤差を解消して溶接狙い位置の精度を上げるという狙いのものです。
しかし、このようなセンサーは販売されていますが、今でも多くの溶接ロボットユーザ様は、溶接ロボットの溶接狙い位置が起因の不良やエラー停止に悩んでいます。センサーはついているが、センサーを使う事で予期していない動作をする為機能を使っていないという話も現場の方からは非常に良く聞きます。
ある特定の場面では大きな効果を生むセンサーですが、その扱いや活用方法には多くの前提条件があり、使用者側が完全にその特性(メリットデメリット)を理解した上で加工PRGを組まないといけません。
センシングによる補正方法の代表的なものは2点検知での直線補間になります。
直線的な溶接線部の開始点と終了点をセンシングして、2点間を直線的に動作させる補正方法です。
短い溶接長であれば、中間部のたわみなどの影響を受けにくいですが、長い溶接長を2点検知の直線補間しようとすると中間部でトーチとワークの距離が離れたり、近づいて接触したりという事が起きます。
長い溶接長が必要であれば、倣い機能を保有したレーザセンサなどを活用する方法がありますが、リニアにセンサーで読み取られたエッジ部にトーチ位置が補正されますので、仮付けしている部分やエッジ検出が失敗した場合などは、溶接線以外の場所を溶接してしまいがちです。
人間は溶接ルートの全てを確認しながら、その形状や経験をもとに脳で考えて、大事な所は補正を掛け、影響がない所は無視するという判断を行います。
しかし、センサーで得られる波形では、でデジタル的に処理されており、極端な話在有るか無いかで、良くも悪くも嘘をつけないので、見えたままの情報でロボットの動きが変わってしまいます。
センサの性能というよりは、その情報を処理するソフトウェア側の性能が圧倒的に人間に対して劣っています。
2Dのレーザセンサから得られたデータを3Dモデル化して全体形状の中からロボットの自動補正を掛けるソフトウェアも販売されていますが、それでもやはり得られたデータをもとに忠実に動作しますので、データにフィルタやノイズ除去などの処理をかけて、何とか正常な動作を行うように調整を掛ける必要があります。
ロボットやセンサーの機能は非常に高く、人間を超える性能を持っていますが、それを制御するソフトウェアが圧倒的に人間の脳に対して性能が低いです。
この課題は解決するには、やはりAIとロボットシステムとの融合が必須と思います。
溶接部の形状や条件をベースに人間の判断材料としているポイントを要件定義し、データ蓄積と共に最適解を導いてただちにロボットの位置を補正する。
このような技術が溶接ロボットに最も必要だと思います。
技術的にはすでに実装可能なレベルにまできているとは思いますが、膨大なデータ処理を行いつつ、溶接タクトを現状のシステム同様の速度で行えるシステムが一般ユーザーが自由に使える環境になるまでには、まだまだ時間が掛かるでしょうが、今後必ずこのようなシステムはが生まれてくると思っていますので、今後またご紹介していきたいと思います。
今回は溶接ロボットに求められるセンシング技術について述べてきましたが如何でしたでしょうか。
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